2010年12月 Standard Chartered Marathon Singapore

シンガポールマラソン、走ってきました。

感想は...「大渋滞」「予想外の単調コース」といったところでしょうか。
f:id:kaimizu:20170513222141p:plain
とりあえず自身初の海外フルマラソン。この週は仕事でペナン、シンガポールと4日間飛び回り、ひたすらパスポートをスタンプで埋める作業の連続でした。日本からの出張者に「なんで駐在員が出張者より大きなカバン持ってんの?」と言われながらも、ずっとマラソングッズを持ち歩くも結局一度も使わず...

土曜日の朝は本当は遅くまで寝ていたかったけれど、早めに起きて溜まった洗濯物を洗って、それからマラソン準備して空港に移動。格好はスポーツバッグ1つにポロシャツ、短パン、サンダル。これだけで今から外国にフルマラソンを走りに行くわけで、なんだか自分でも不思議。格安航空のJet Starに初めて乗ってシンガポールへ。自費旅行なので節約するため空港から会場まではタクシーではなくMRT(モノレール)で移動。駅から会場までの道が分からず暑い中を歩いて疲労困憊。会場に辿り着いたのは受付締切1時間前の午後6時。日本人専用ブースでゼッケン、タグなどを受け取る。大会要項を読むとどうやらこのマラソンは合計で6万人が走るらしい、すごい!
内訳は、フル:19千人、ハーフ:15千人、10km:21千人、キッズマラソン:5千人。
ちなみにシンガポールの人口は500万人超。今回6万人のうちたとえ1万人が外国人だったとしても5万人はシンガポーリアン。ということは人口の100人に1人がこのレースに出ているわけで、それってやっぱりすごい!

スタート地点のOrchard Roadに移動して数ヶ月前に予約を入れた安宿にチェックイン。うーむ、久しぶりにこんなシンプルなホテルに泊まる。ま、寝るだけだから。夕食と明日の朝食の買い出しのためにOrchardの高島屋へ。地元で大人気のデパートで、土曜日の夜ということもあり大混雑。特に地下の日本食コーナーはどこも行列で「味仙ラーメン」というお店は30分以上待ち。値段を見ると日本円で1000円くらいする、それを家族で食べるのだから結構な額になるはず。今のアジアの購買力を肌で感じる。今、日本にそれほど元気がなく、世界でのポジションが凋落しているのは事実かもしれませんが、その挽回策として、こういった日本食や日本現代文化といったソフト(=マンガ、アニメ)は韓国や中国にはおいそれとマネが出来ないわけで、これからはハード(電機製品や車)だけでなくこういったソフトを武器に海外で勝負すればいいのではないか、と考えます。と、思わず話がずれましたが、あまりの混雑に高島屋で食べることをギブアップ。別のビルに入っている大戸屋で夕食をとりました。

さてレース当日。
午前5時スタートなので午前4時起床、暗い部屋で朝食をとり、ノロノロと準備をしてスタート15分前にホテルを出る。スタート地点はホテルの目の前だし、どうせ1万9千人も走るからすぐにはスタート出来ないだろうし、とのんびり出発したのはいいけれど、Orchardはすでに人・人・人で完全にあふれかえっており、まったく後ろが見えない...ちょっと多すぎじゃない?と思いながら最後尾に向かって歩くもずっとバリケードが張り巡らされて横入りが出来ない。よく見ると予想完走タイム別に並んでおり、なぜかワタシは一番遅い「6時間以上」にカテゴライズされている...警備員が厳しい目で見ているためおとなしく後ろに行くしかなさそう。エントリー時になにか間違えたか?
午前5時直前に列には入れたものの、スタートの合図が鳴ってもなかなか前に進まない。陽気な2人のDJが「盛り上がってるかーい!」と叫んでいるが、こちらは人波に飲まれてどこに立っているのかさえもわからない。もともと暑いのに押しくらまんじゅう状態で、走る前からすでにドッと汗が出る。
f:id:kaimizu:20101205045058j:plain
結局スタートラインを切ったのは5時18分。なんとか走り始めるも道幅が狭くて人が多くて、もう全然前に進めない。もともと6時間台ランナーと一緒に走っているのだから速いペースのわけがない。あたりはまだ暗い。
走り始めてすぐにOrchardから外れ、歩道のないトンネルを走る、真っ暗なところからいきなり明るいトンネルに入るのはなんだか新鮮な感覚、でも、風がまったくなくてこれまた蒸し風呂状態! 今度は右に曲がって南に向かう。日曜日の早朝ということもあり店などまったく開いておらず、チャイナタウンを走っていてもそれらしい雰囲気ゼロ。結構コーナーが多く渋滞しているため曲がりづらい。交通規制しているとはいえ片側3車線のうち1車線は車用に残してあるので、2車線を大人数のランナーが走るため狭くて仕方がない。4kmで水エイド、まだノドは渇いてなかったけどとりあえず口に含む。海の上、Esplanade Bridgeを渡るところで右側、明け方の薄闇の中Marina Bay Sandsが見える。荘厳な景色に「おぉ!」と一瞬声が出る。しかしそこまで、後はひたすら単調なコース、そしてまわりは渋滞解消せず、の状態が続く我慢の時間帯。

距離表示はほぼ1kmおきにある。手元の時計で10km通過が1:00:59。「ま、大渋滞で自分のペースで走れないし、寝不足で体調イマイチだし、この後暑くなるから無理は出来ないし」と心の中に言い訳を並べながら走る。「そうそう、もともと今日はファンランだし」と言い訳追加。12kmを過ぎてチャンギ空港方面に向かうEast Coast Parkに入るが、これがまたえらく単調でつまらない。シンガポールにいるのか東京近辺のどこぞの海の公園を走っているのか、区別がつかないくらい。先頭ランナーとすれ違えるのはいいが、公園の散歩道ゆえ道幅は狭く3、4人も走ればもういっぱいいっぱい。おまけにアスファルトではなくコンクリ製、防砂林で景色も広がらずにテンション下がりまくり。なんだかすでに疲れてきた。

20km通過が1:53:54、中間点が1:59:20、サブ4が怪しくなってきた。日が昇って暑くなり始めたので、各エイドでスポーツドリンクを飲み、水は2杯とって立ち止まって頭と腕、足にかける。ランナーで大渋滞しているので必ず誰かにぶつかる。まだあと20kmもあるのか...とにかく頭を空にして淡々と走るが疲れが出てきたのか、今までは他のランナーをよけるため、肘をひっこめたり斜行したりしていたのが出来なくなってきて、何度か接触してしまう。ここで初めてエイドのバナナを口にする。と、いきなり持参していた携帯が鳴る。日本の家族からだ。「い、いまマラソン走ってるんですけど...ハァハァ」と走りながら日本と会話する。こんなに朝早くから走っているとは思っていなかったらしい。

30km通過が2:47:53。やっと公園を抜けるが工事現場の裏側みたいなところで、これまた景色がつまらない。そしてとうとう太陽を遮るものがなくなり、ランナーを容赦なく照らし始める。「ひぇー、暑い!」とうつむいて走るが効果なし。でもなんだかやっとまわりが空いてきた。少しだけスピードを上げてみる。もう何人、いや何千人抜いてきただろうか、そして誰にも抜かれてないや、と思っていたらこの地点で欧米人のお兄さんに抜かれた。大股でとても追いつけない。そういえばこのレース、やけに欧米系のランナーが多い。またMarina Bay Sandsが見えてきた。もう明るいのではっきり見える。立ち止まって携帯で写真を撮ろうとするが、さっきの電話のあとポケットへの入れ方が悪かったのか変な画面ロックがかかってカメラを起動出来ない...うー、諦めてまた走り出す。橋を渡ってMarina EastからMarina Southに入る。35km地点を過ぎてやっと完走が見えてきた。少し速いぺースでこのままとっととゴールまで行ってしまおう。と思ったら、そうはいかなかった...

なんと36kmを過ぎた地点が、こともあろうか、ハーフと10kmランナーとの合流ルートになっている。そして道路をびっしり埋め尽くした歩行者(ランナーより多かったと思う)の大群が眼前に迫る。ゾンビ映画の一コマのようだ。「ウソだろ...」そして合流地点からちょうどEast Coast Park Wayの上り坂の橋になっており、橋の端(シャレではない)を走るため、もう大渋滞、というか、もはや走れない。まるでコンサートからの帰り道状態。上り坂なので走ることを諦めたハーフ or 10kmのビギナーランナー(歩行者)の群れの中に突っ込んでいく、行かざるをえない。極めつけは手をつないで歩くカップルランナーさえいた。そのど真ん中を割って走ってやろうか、と一瞬思ったが、シンガポールはなんでも禁止の国なので「カップルの邪魔をしてはいけない」という法律があったらまずいのでやめる。さすがのひどい状況に、走っている一部のランナーから「道をあけてくれ!」と声が飛ぶ。ああ、背中のゼッケンにはどうせなら「Don’t Walk!(歩くな!)」と書くべきだった。

滅入るような最後の折り返しを越えると40km、手元の時計で3:42:13、もはやタイムはどうでもいいが、なんとかサブ4はいけそう。ラストは力を振り絞って渋滞の中がんばって走る。ゴールタイムは手元の時計で3:54:14 もう充分です。
f:id:kaimizu:20101205093651j:plain
ゴールゲートの写真を撮りたかったが、立ち止まってはいけないので指示された方向に歩く。手渡されたペットボトルを一気飲み。Tシャツと結構立派なメダルをもらうときに「おめでとうございます!」と言われてちょっと嬉しくなる。更にスポーツドリンクを立て続けに2杯一気飲みしてやっと落ち着いた。ゴールのCity Hall前の芝生に座り込むが、すでにゴールした大勢のランナーでごった返している。みんなダメージ大きそう。ちょっと休憩して、マレーシアから来ているはずの走馬会の仲間達を探してみるが、さすがにこれだけの人数の中、見つからない。みんな楽しそうにレースの感想を話し合っているが、ワタシはまったくの孤独。う~ん、今日の労苦を共有出来ないのは残念。さみしくそのままの格好でMRTの駅まで歩いてホテル最寄駅まで乗る。ホテル到着が午前10時過ぎ。シャワーを浴びてチェックアウトの正午12時ギリギリまで寝て、夕方の便でマレーシアに帰国した。
f:id:kaimizu:20101205092613j:plain
初の海外フルマラソンはフラストレーションの多い大会となった。アジアの巨大フルマラソンはみんなこんなものなのかもしれない。

良かった点は、大会の運営自体はしっかりしていたこと、あれだけの人数がいたのにスタートもゴールも大きな混乱なくきっちりやっていた。それと、面白いと思ったのは背中のゼッケン。「後ろのランナーにコメントを!」とあったので、ワタシは、「You can walk, but don’t stop !」(歩いてもいいけど止まらないで!)と書いた。実際他のランナーのコメントを楽しみにしていたけれど、他人のことなど気にもかけないのか、ほとんどの人が背中側のゼッケンは貼っていなかった。書いてあったコメントで多かったのは「家族のために頑張る」「追い抜くときには声かけてね」など。それとやけに小さな字で長々と書いているため読めないものも多かった。面白かったのはある女性ランナーで「私のお尻を見てないで前見て」と書いていた。なかなかの美人ランナーでした。
f:id:kaimizu:20101204211928j:plain
距離表示は...1kmごとで、前半は正しかったと思うが、後半は距離が怪しい個所がいくつかあった。明らかに「1kmないでしょ」というところもあった。シンガポールだけに(他の東南アジアの国と比較しても)しっかりした計測のもとにやっていると思っていたが、そうでもなかったみたい。

地元の応援はほぼ皆無、この暑いのに早朝から外に出て応援する人がいないのは当然か。その代わりボランティアの若者たちがところどころで奇声をあげて応援してくれた。You can do it !、とか、All the way ! (聞き間違いかもしれない)とか言っていた。

エイドは水のみ、水&スポドリ、バナナなどあり、設置数は十分だったと思う。あと、やたらとチューブ式のクリームがMuscle Rubというポイントで配られていた。日本でいうスプレーの役割でしょうが、見た目は食べ物かと思って誤って口にしそうになってスタッフに慌てて注意された。その匂いがきつくて、あれは元祖タイガーバームだったのか、走っていてずっとその匂いに悩まされた。

一番の問題はコース設定。とにかく単調でつまらないこと、そして最後の10km・ハーフランナーとの合流。あれはなんとかしないとダメでしょ。日本から何万円も払って走りに来てもらうにはまだまだ改善の余地あり。例えばハーフで取り入れていたセントーサ島をフルのコースにも入れると楽しくなると思う。

ま、これが東南アジアのフルマラソンなのでしょう。「マラソンという困難なものにチャレンジして、もし完走できたら素晴らしい! 」という心構えであり、そもそもがみんなで参加する一体感を共有するお祭りであり、日本のように「自己ベスト更新!」という変に高いテンションで臨むものではありません。そもそもどれだけの人が事前に練習をしてから挑戦してきたのか...あれだけ歩いている人を見た後では疑わしい限りです。

「来年も出るか?」、出ないでしょうねぇ。来年はまた別のレースを探したい。とりあえず東南アジアのビッグレース、1つ体験出来てよかった。アジアにはStandard Chartered Bankの冠がついたマラソン大会が他にもたくさんあるのでそれらに一つずつ参加してみたい。