2013年3月 Twilight Ultra Singapore 16時間走

Twilight Ultra Singapore 16時間走に参加してきました...

結果は約110km、先週のフルマラソンで限界まで頑張ったせいで、このウルトラではそれを超えて極限まで疲弊しました。

最近フル以下の駆けっこばかりで本業のウルトラが疎かになっており「これはイカンな」と思って申し込んだのがこのシンガポールでの16時間走。スタートが土曜日の午後7時、終了が日曜日の午前11時のトータル16時間。途中で止めて帰宅してもよし、遅れて参加してもよし、フレキシブルかつオーガナイズもしっかりしており、予想以上にいい大会に出会えました。

コースはシンガポール東部の海浜公園の散歩道を片道10km往復、スタート地点が中央にあり、そこから東に5km往復、西に5km往復で合計10kmが1ラウンド。すなわちエイドが2.5kmおきにあるコース。主催者によると「テント設置場所の関係上、1ラウンドは正確には10.2kmです」とのことで、それを正直に発表するところがマレーシアと違う!とスタート前から甚く感心。

さて、往復ともLCCを利用。航空運賃は以下のとおり。
行き:Air Asia:RM72=2160円
帰り:Jet Star:SGD45=3150円

ゆっくり寝て行くならバス(片道:5-6時間)という選択肢もあったな、と後で思いました。来年も出るならそうするかも。

会場に着いたのが午後6時過ぎで急いで支度、目の前が海、ということもあって湿気がものすごい、その時点で少し気が重くなる。思い起こせば、このコースは2010年のシンガポールマラソン、2011年と2012年のSundownマラソン、と毎年1回ずつ走っているので少しは分かっているつもり。フラットでのんびり走るにはいいけど単調で精神的に厳しいコースという印象。そして今回何往復もしてあらためて体感したのが、この散歩道はアスファルトではなく路面がコンクリートのため長時間走ると足へのダメージがものすごい。正直今回は勝負レースではなかったので、シューズも靴下も使い古しを持参したのだけれど、それが大きな過ちでした...

参加者は300人くらい、ざっと見て女性が30人ほどいたのが意外。日本人はワタシを含めて三人(事前配布の名簿上の名前から類推)、そのお二人に折りを見て話しかけようと思ったけれど、二人とも夜中の間に居なくなってしまったので結局話せずじまいでした。

マレーシアからも結構な人数が来ているようで、かなり久しぶりに「おさかなさん」を発見、ご挨拶したところ「昨年も参加して100km走った」とのこと。確かにこの方はスピードよりも粘りがありそう。それとマレーシアのレースでよく見かける写真家(お仕事はたしか新聞記者)の方にも会い、「100kmじゃ足りないから110km走れ!」と妙な激励を頂きました...

まだ明るい中、午後7時にスタート。ランナー達は「あれ、右と左、どっちに行くんだ?」と一瞬とまどいつつ、なんとなく走り出す。先頭の6,7人以外はすごいスローペースで思わず自分も先頭集団に入ってしまう。6分/kmを少し上回るペース。おさかなさんもハイペースで4,5番目くらいにつけている。負けず嫌いなところは相変わらずのようですが、ただし明らかにフォームが変わった。右肘で右わき腹をピチッ!と叩く仕草がなくなり、かわりに犬がチンチンをしたような状態(げんこつの手の甲が上を向いている)から軽く前面に猫パンチを繰り出すようなフォームに進化している!なんか妙に愛らしくなったな、とすれちがいざま思う。

自分がどれくらい走ったかをチェックするシステムは至ってシンプル。ゼッケンにあらかじめ距離が印刷されており、片方のエイドに到達したらスタッフにサインペンでチェックしてもらう。そこで折り返して中央地点(スタート)通過時に念のためゼッケン番号を見せ(止まる必要なし)、もう片方のエイドに到達したらまたチェックしてもらう。スタートから2.5kmでチェック、折り返して5km地点となるスタート地点を越えて(ないしはエイドがあるので止まって)反対側7.5kmに到達したらまたチェック。チェック時に歩を止める必要があるけどそんなスピードで走ってないからまったくもって気にならない。

エイドは、両端は水+スポドリ(滅茶苦茶薄い。スタッフが氷水に粉を入れて作っているけどどうやら溶けきっていないか、入れ足りなかったみたい)とバナナのみ。スタート地点=中央メインエイドは、スイカ、パン+ピーナッツバター/チョコペースト、なぜかポテトチップ(数時間後にはすべて湿気っていた...)があった。夜半にカップヌードルも提供されたけれど、全員分はなかったようでワタシはありつけてラッキーでした。BYOB(Bring Your Own Bottle)という事前通知があったのでメインエイドには持参ボトルを設置。あらかじめそれにスペシャルドリンクを入れておいたランナーもいましたが、ワタシ一人だけはボトルではなくカップ持参で自分で水かスポドリを注いで飲んでいました。実際にはスポドリは飲んで、水はひたすら足や二の腕を濡らすのに使ったけど...

さて、スタートして1時間、10km走っただけでもう両太ももが痛くなってきた。どうやら先週本気でフルを走った疲れがまだ抜けておらず、先週のフルのラスト10kmと同じ状態に陥りました。「ちょっと待ってよ~。まだあと15時間あるんだけど、どうしてくれんのよ...」と、自分の「足さん」との対話不足を痛感。1週間まったく走ってないからとっくに疲労は抜けていると思っていたけど、疲れは奥底に残っていた。おまけにフルマラソン前に捻った右足首がまだ痛いし、実はお腹の調子も日本からずっと悪くてしょーがないのでこの16時間走の数時間前に、自宅で正露丸+マレーシア版正露丸(らしき薬)+ストッパ(日本で買った貴重な下痢止めの薬)の3種をまとめて投薬、力技でお腹に一時的な平安を保っている、という状態。要は、せっかく楽しみにしていた16時間走なのに、体調がいまいちよろしくない。自己管理が悪いので言い訳無用なのは分かっているけど、この太ももの筋肉痛発生は想定外。結局このお陰で今回は楽しむ走りが出来ず、最後まで苦しい状態が続いてしまった。

20kmが2時間5分、30kmが3時間10分くらい、40kmが4時間20分くらい、までは良いとして、5時間でかなーり足が動かなくなり、中央エイドでしばらく折り畳み椅子にへたり込む。持参したどら焼き食べながら「助けて、ドラえも~ん!」と虚しく祈ってみる。ちょっと早いけどPower of Musicの力を借りることにしてi Pod Miniを引っ張り出す。意外にも音楽を聞きながら走っているランナーがほとんどいないので主催者側に確認したところ「勿論OK、どうぞご自由に」とのことなので安心してMusic Start!

このお陰か60km、70kmまでは結構順調。スタート後の数時間はキャンプする人やレストランから出てくる人、夜の海岸を散歩する人らでごった返していた散歩道も夜半を過ぎると人出もかなり減って、心なしか涼しくなってきた。しかし期待していた小雨は降らず、ずっと無風なのがきつい。

先頭を走る中華系の若いランナーは6分/kmペースを維持、かなり速い。聞けば昨年のチャンピオンで昨年は130km走ったらしい。あとはスタートダッシュしていたインド系のお兄さんは途中から歩き出していたし、やはりいいペースだった欧米系の年配ランナーも60kmくらいから歩いていた。「君たち、16時間もあるんだから急がなくてもいいのよ」と余裕をかましたいところであったが、もはやこちらもスピードが出ない状態。ただしポリシーとしてコース上では歩かない。その代わりエイドで長く休む。そのせいか、すれちがいに他のランナーから拍手してもらったり、親指を立てる仕草(Thumb Up=いいね!)でお褒めを頂いたりした。勿論こちらもThumb Upなりで返す。16時間という同じ目標を抱くランナー同士、周回コースということもあってか走っているうちに一体感が感じられて良かった。

80km到達が10時間後、午前5時。路面が固いとはいえ、こんなフラットなコースでこんなに時間が掛ってしまったのは予想外。言い訳は太もも痛とこの高温&多湿な環境。スタート時に比べてランナーの数もすでに半減くらいしたか?コース上にいるランナーのうち走っている数も全体の半分かそれ以下、あとはみんな無言で歩き続けている。自分も辛うじて2.5km走っては各エイドでへたり込む状態。疲弊してフォームが崩れたせいか、右足裏にBlister(水膨れ)、両股ずれ、と手負い状態が悪化。昔ウルトラ走るたびに終盤はこんな状態だったなぁ、とシンガポールの明け方の月を見上げながらため息をつく、参りましたよ、これは。

正直スタート前は「130kmくらいいけるかも」とたかをくくっていたけれど、走り始めてすぐに目標修正。このままいって100km到達が13時間としたら、いいとこ120kmが限界か。しかし80km以降は走ってるんだか歩いているんだか、というペースまで落ち込み、エイドで10-20分間硬直、実際に100kmに到達したのは午前8時前、先ほど計算したとおり13時間で100kmだけどもうここで止めた方がいいんじゃないか、これから日が昇ってガンガン暑くなるし、人出も増えるし、なによりもこの状態で無理に走り続けると故障の可能性もある...と、いろいろ考えるが「110km走れ!」と激励されたしな、とその思いだけであと10km走った。すでに高い位置にある太陽に背を焼かれ、折り返しては日射しを正面に受ける。と、おさなかさんとすれ違う、さすが粘りの人、まだ走っていたんだ。挨拶しようとしたけど、もはや彼も朦朧としているのか、お魚だけに目が泳いでいた。ので、挨拶は止めておきました。名誉のために申しますと、おさかなさんはしっかり100km到達されていました。

ワタシは午前10時前に110km到達して投了、不思議と最後まで眠気は感じなかった。体調さえよければ時間ギリギリまで走りたかったけれどとにかく準備不足でした...というか、甘く見ていたというか、本気でフルを走った1週間後にウルトラを入れてはイカン、ということがわかりました。
ここで終了することをスタッフに伝えると、なんとなんと! ハーゲンダッツのアイスクリームが進呈されました。それも味の選択肢が5種類くらいあった。クッキー&クリームと迷ったが、やはりチョコレートを選択。溶ける前に素早く食べました。主催者のリーダーがワタシの名前を呼んで「110km到達!」とアナウンスすると、テントに居たみんなが拍手をしてくれました。これは嬉しかった。

ゴール後に欧米系の年配ランナーさんと話したら、彼は120km到達したとのこと。後半は歩き&走りが続いたけど、ワタシとの違いはまったくと言っていいほどエイドで立ち止まらなかったこと。ワタシが「自分は歩かなかったけどエイドに長居した」と言ったら、傍らに居た彼の奥様が「Different Strategy(戦略の違いね)!」とおっしゃる。ワタシが「そう、その結果、彼が勝った」と言ったら、彼が「今回はね」と笑った。来年も会おう、と挨拶して別れました。前半トップだったインド系ランナーは105kmで終了。「足が痛い」というので見たらビブラムの5本指を履いていた。よくもこんな固い路面をそんな薄いものであのスピードで走ったね、感心感嘆! そして、昨年のチャンプは今年140km走破で当然今年もチャンプでした。この高温多湿な環境でペースを落とさずに走り切ったのはすごい。是非日本のウルトラレースで走ってみて欲しい。他にも複数のローカルランナーから話しかけてもらい、「今度シンガポールに来たら一緒に走ろう!ただし練習スタートは午前4時半だけど」と言われて電話番号を交換したりしました。気持ちのいい大会でした。

しかし心残りはメダル。事前登録時に「どうせ練習会みたいなものだから」とメダル不要で申請していたのですが、みんながもらっているメダルを見たら等脚台形の大きく立派なメダルでした。あれはとても珍しい、有料でももらっておけばよかった。1個くらい余ってないかな、と思ったけど、人数分しか手配していないようでした。あー、悔いが残る。来年はデザインが変わっちゃうだろうなぁ...

ということで、久々の100km超は特に成果のようなものはなく、今回はむしろダメージが大きく残りました。でもちょっと時間が経ってから振り返ると「結構楽しかったな、来年も出たいな」と思える大会でした。敢えて指摘するなら、日本の大会に比べるとエイドの食事が貧弱でした。でも大会の趣旨が「極力セルフで」ということなのでランナーの皆さんは自分で好みの飲食物を持参していたようでした。来年も日本で同じフルに参加してからこの16時間走に参加したら、また2週連続になってしまうかもしれない。今年6月の「しまなみ海道100km」に向けて練習になかったか、というと、どーかなー、というかんじ。

スタッフの皆さんには眠い中(というか結構な人数がすでに寝ていたが)よくして頂きました。シンガポーリアンはきっとジョグノやってないだろうけど、ありがとうございました! という感謝の気持ちでいっぱいであります。