2013年6月 しまなみ海道100kmウルトラ遠足

念願のしまなみ海道100kmウルトラ に参加してきました。
今までいろいろなウルトラの大会に出ましたが、メジャーな大会でとりわけ出たかったのがこの「しまなみ」と「四万十」。今回のしまなみは日本のラン仲間と一緒に走る約束までしていたのにネット受付開始一日半で定員に達してしまい、結局エントリー出来たのは日本国外に居る自分だけ。さすが海宝さんの「しまなみ」、まさかこんな短時間で締め切ってしまうとは、もはや日本のマラソンエントリー状況ってすごすぎます。

大会が土曜日なので、木曜日の夜行便でKLから飛んで金曜日の朝に関空入り。スタート地点の広島県福山に移動。受付会場はキャッスルホテルのチャペルなので、なんだか結婚式に出るような気がした。ホワイトボードにいろいろ書いてある詳細に目を通してホテルへ。あまりにも寝不足なのでホテルですぐ寝ようと思うも、なんだかやけに部屋が乾燥していて眠れない、まぁレース前はいつものことですが。

午前3時半に起床、モタモタと準備して昨日の受付会場にて荷物を預ける。この大会はスタートが福山市、そこから尾道まで走って「しまなみ海道」を渡り、愛媛県今治市がゴールのOne Wayルート。ふと思ったけど、100km以内の大会で都道府県をまたぐのはこれが初めてかもしれない。というか、他には無いかもしれない。

調べてみると、しまなみ海道は全長59.4km、7つの橋、7つの島を通っており、本州と四国をつなぐ3つの橋(明石大橋、瀬戸大橋)のうちの1つ。走る前まで、というかスタートしてからも「尾道しまなみ海道にたどり着いたらあとはひたすら海上の橋を走る」と思い込んでいたけれど、よくよく考えてみれば分かることで、橋自体の長さは合計で10kmほどしかなく、自動車専用道路であるしまなみ海道はそのまま各島内を突っ切っているものの、自分らランナーは橋を渡り終えるたびに平地に下りて、あとはひたすら島をぐるっと巡る旅路だった。

スタートは午前5時、福山城公園まで登るとすでに参加者で埋め尽くされている。主催者の海宝さんがハンドマイクで注意事項を話しているが、遠くてよく聞こえない。裏に回って近づいて聞いてみるとなかなか面白いことを言っている。
「今回はネットで申込みを行ったので、若い人、100kmビギナーの方が多いです」
「募集枠1000人(出走者1220人)はすべて自分で申し込んだ人で、主催者であるワタシのコネは一切使っておりません!」
「ゼッケン番号は入金した順番です。No.1のランナーは一番にお金をワタシの口座に振り込んでくれた人です」
「スタートは午前5時、まだ早朝ですので、最初の10kmの間はおしゃべりなし、無口で走って下さい」
「これはマラニックであり、レースではありません。競技性はありません」
「信号無視厳禁!決して車道には出ずに歩道のみ走って下さい!」
「すみません、いつもどおりしゃべりすぎました。スタートまであと7分しかありません」

そしてカウントダウンが始まりスタート、全ランナーが幟をくぐってスタートするのでいきなり大渋滞。ワタシはそれを最後尾から眺め、空いたところでやっとスタート。と、今度はお城を降りる石段でまた渋滞。なかなか走り出せません。スタートから10分くらいかけて道路に下りたのはいいけれど、歩道が狭くて一列縦隊で走る。「車道に下りないで」と言われているので前にも出られず、仕方なくゆっくりゆっくり走る。「今日はマラニックだからいいや」と思い、まわりのランナーとのおしゃべりを楽しむ。福山から尾道までの国道沿いコースは正直非常に単調、トンネルが多くマスクまで配られたのには驚いた、もらわなかったけど。このあたりで宮城UMCのT田さんに追いついた。佐渡ヶ島206kmで知り合いとなり、毎年奥武蔵ウルトラで再会する。今年も奥武蔵にエントリーした、ということは来月またお会い出来るということ。

本日の格好は、上からサンバイザー、小金井公園RCのランシャツに防寒具兼雨具を羽織り、下はポケットつきのハーフランパン。マレーシアで買った伸縮自在のウェストポーチにお遊び用デジカメを入れて走る。シューズはミズノのセーフティ系「Wave Rider」。このシューズは走っている間、何度も砂利が靴の中に入ってしまい難儀した。おそらく20回以上立ち止まって砂利を取ったと思う...エイドが充実していると聞いていたので、飲食物の携帯は一切無し。リタイアする気もないので「注意事項」に書いてあったバス代となるお金も持たなかった。

単調という意味できつかった尾道までの道のりを乗り切り、20kmエイドから見上げると、ちょうど1つ目の橋(尾道大橋)を渡って行くランナーが見える。「おー、あんな高いところを走るのか」となんだか嬉しくなる。サイクリングロードを走って上り、橋にたどりつく。が、この橋は残念ながら二重構造で上は車道、下が原付、自転車、歩行者道路になっており、屋根があるため解放感はない。たしか3番目くらいの橋から二重構造ではなくなり、広々とした景色を楽しむことが出来た。でも歩道は狭く、ものすごい勢いで走ってくるロード用自転車に何度かはねられそうになり、正直ずっと怖かった。接触事故の危険性を感じた。「もともと1200人も走ることを想定して建設されていないから(苦笑)」と、誰かが言っていたのを思い知った。

スタート直後からずっとおしゃべりしてきた兵庫県のYさんという方と一緒に走る。昨年の丹後ウルトラで無念のリタイアをしてしまい、今回は2週間前の鯖街道マラニック(70kmくらい?)を完走し、満を持してこのしまなみに乗り込んでこられたとのこと。2人で30kmを通過したのがちょうど午前9時、ということは4時間かかった=8分/kmペースということ。こりゃいくらなんでも時間かけ過ぎか?確かにこの大会はマラニックであり、制限時間は16時間(普通のウルトラは14時間)、道中チェックポイントも無し、と緩い設定だけど今日中に大阪に戻るのであればもうちょい急がないとまずい。

風光明媚なコースゆえ立ち止まって写真を撮ったり、なぜか夏のレースなのにトイレに何度も行ったりで時間を浪費したけど、ちょっとゆっくり過ぎたかもしれない。ここから6分/km近くに上げて34.7km地点のエイドに到着。地元名産のオレンジ?をそのまま搾って出してくれるジュースが天にも昇る美味しさ!しかし今回は胃腸を守るため、この時点での水分ガブ飲みは自重して1杯で終了。ここでYさんとお別れして、自分のペースで走り出す。今日は朝からずっと曇天、直射日光がなく走りやすい。天気予報だと残念ながら午後から雨なので少し先を急ぐことにした。

と、見慣れた格好のランナーが前方を走っている。ウルトラの大会でよくお見かけする仮装ランナーの一人「悪代官様」。ちょんまげの侍姿で着物の背中に「おぬしもワルよのぉ~」と書いてある。うかつに追い抜くと代官様が刀を抜く、というのは嘘。こちらから「昨年もお目にかかりました、9月の秋田で」とお代官様にご挨拶申し上げ、しばらくウルトラ談義をしながら走る。「こんな格好なんで16時間たっぷり時間をかけて走ります」とのことで、先に行かせて頂いた。

40km通過が5時間、50km通過が6時間、とほぼイーブンペースで走る。このへんから体調がおかしくなってきた。体が若干ながらしびれ気味で走りづらい。軽い脱水かもしれない。日は出ていないが発汗量はそれなりにあるのだろう、ということで55.2kmのエイドでスポドリをガブ飲み、結局コップで6杯も飲んだ。そしてパイプ椅子で体内に水分が行きわたるまで休憩。10分以上休んでいたらスタッフの方に「大丈夫?ゴールまで行ける?」と心配されてしまった…大丈夫、這ってでもゴールしますよ。

そこから少しずつ調子が戻ってきたものの、足裏がずっと痛い。セーフティ系なのにどういうことなんだろう?アスファルト(車道)というよりはコンクリート(歩道)の上を走ることが多かったからだろうか。60kmを越えた多田羅大橋を渡り終えた下り坂で道路の盛り上がりにけつまずいてしまった。本当はうまく回転してダメージを軽減したかったのに、見事に前方につんのめって右手と右ひじを擦りむき、右膝を強打した。数秒間茫然と座り込んでいたら家族を応援している欧米系の方が自転車でやってきて「スプレーいるかい?」と聞いてくれた。それを謝辞して立ち上がる。デジカメは損傷なし、よかった。考えようによってはシャツも破けず、再生可能な自分の体だけが傷ついてよかったのかもしれない(苦笑)。右膝は直後は激痛走るも、徐々に痛みがひいた。坂を下りるとすぐエイド。ラッキーなことにおしぼりを配っていたので患部を丁寧にふいた。そういえば1月のドバイでもすっこけたなぁ、と思い出した。半年内に2回もレースでこけるとは…

このへんから雨がパラパラと降って来る。スタート時は防寒具を羽織っていたが、途中で暑くなって脱いだ。このマラニックでランシャツを着て走っているランナーは数人しかおらず、ちょっと恥ずかしかった。ほとんどがいまどきのトレイルランの格好?で、下はロングタイツ。上はTシャツとアームウォーマー or タイツ系(コンプレッサーというのか?)。そしてトレイル用のザックを背負っている人が多かった。至れり尽くせりの大会と聞いておりこちらは手ぶらに近い格好だっただけに、重装備ランナーが多くて驚いた。ビギナーの割合が高かったせいかもしれない。自分が前半はゆっくりペースで当然ながらまわりのランナーもかなりゆっくりペース、島に入ってコースが広がっても追い越しなし、上りは皆さん基本歩き、と通常の大会とは異なったのんびりムードだった。

66kmエイドで、伯方島名物の塩羊羹を頂き、70.1km地点の大きなエイドではMCから名前をコールされる。そこでやはり名物「塩ソフトクリーム」を探すもエイドでは供されず売店のみだったので、お金を持たない身としては諦めざるを得ず。ここの通過時間が午後1時半くらい(だったと記憶している)。ここまで8時間半くらいかけて走ってきた計算になる。30km過ぎからほぼ6分/kmのペースで走りながら、トイレ、写真、エイドで時間を費やしてきた。

75kmを越えたあたりから雨が本降りになってきた。高速道路の下にエイドが見える。コース上幾つかあった私設エイドの一つで、ここはなんとビールが置いてある。親子でエイドを出しているらしくチビッ子が「お薦めはビールでーす!」と何故か踊りながら叫んでいるので、おとなしくお薦めに従って一杯いただき、更にコーラで締めた。ここから雨具を羽織る。80.7kmのバラ公園エイドでは一杯スポドリをもらっただけですぐ出発、雨のエイドに長居は無用。今まで雨のウルトラは…「岩手銀河」「野辺山」「雁坂峠」、結構経験はしているが、出来れば経験はしたくない。雨の方が涼しくて楽でも、ウルトラは灼熱炎天下の方がウルトラらしくていい。

本降りの中、調子よく走る。途中から写真をすぐ撮れるようにデジカメを握って走っていたが、これだけ雨が降ると故障の危険があるのでポーチにしまう。このマレーシアで買った伸縮自在のポーチは、デジカメを入れて腰につけて走るとカメラがブルンブルンと振動で回転してしまい実に走りづらい。きつく締めると回転は止まるが今度は腹と腰が痛い。せっかく買ったけど、デジカメ入れには向かないのかもしれない。もっと薄い、たとえばスマホなら回転しないのだろう。

大雨の中を営業している私設エイドでコーラを頂き、86.6kmのエイドを超えるとラストの来島海第一、第二、第三大橋に入る。合計約4km。下界からループを上って橋上へ。雨の景色も乙なものではあるが、晴れていればもっと良い景色なんだろうなぁ、と思いながら走る。そこで隠岐ノ島ウルトラマラソンのTシャツを着ているランナーさんに話しかけられ、並走して走った。最後の橋を渡り切って91.9km地点。時間は午後4時前くらいだったと思う。ここまで約11時間を要した。

この東京ご出身ランナーのKさんとは結局ゴールまで一緒に走った。このペースでゴールするとウルトラのPBを大幅更新です、とのこと。確かにしまなみを走ってみて思ったけれど、コースがきつくない。アップダウンが少ない。橋への上り下りはあるけれど自転車道路なので、よくある山岳ウルトラのロングな急勾配とういほどの坂が無いから結局最初から最後まで自分の意思で歩く、ということはなかった。そしてなによりも雨が降ってくれたおかげで体温が下がり、炎天下で受けるダメージを受けなかったことが大きかった。

聞けばKさんはワタシと走歴は同じくらい、国内のウルトラにもかなり参加経験おありで、フルはサブ4レベルながらも昨年はなんとUTMBを完走したとのこと。「普通のランナーでも時間をかければ完走出来ますよ」と言われ、思わずこちらも喰い付いていろいろ質問してしまった。結論、UTMBはかなり魅力的だけど、やっぱりトレイルは足をくじきそうでダメかも。おとなしくロードで頑張ろう。

商店街に入り、ゴールまで2kmの標識を越え、雨のなか今治城内を抜け、ラスト1kmを通過してとうとうゴールへ。ゴールタイムは11時間50分くらい。

走る前は、のんびり走って風光明媚なこのコースを長時間楽しもう、と思っていたけれど、意外に島内のコースは単調で、かつ後半に雨が降ったこともあり、このようなゴールタイムになりました。

着替えてKさんと軽く祝杯を上げ、再会を期して今治駅でお別れ。Kさんはホテルで早速湘南国際のネットエントリーに備えるとのこと。自分はここから今日走ってきたコースをバスで逆戻りして福山駅、そして大阪まで戻りました。

念願であった「しまなみ海道」を走った感想は...
・全体を通してコースは意外にも単調。特にスタートから尾道までの20kmはある意味きつい…
・さすが海宝さん主催の大会。エイドはやはり充実していた。スタッフのホスピタリティも本当に気持ちが良かった。
・高い橋の上を走るのは気持ちが良かったけれど、終始自転車が気になった。でもこれはどうしようもない問題…

海宝さんの大会は「宮古島遠足」に続いて2回目ですが、楽しかった。願わくは「桜道250km」を復活させて欲しい、自分が帰任する頃でいいので(笑)。