2014年9月 Penang 100km

今更ながら9月のペナン100kmマラソン完走記。

出走者は201名、うち完走者は86名。完走率は43%となかなかに過酷なレースでした。
コースはペナン島の中心地:ジョージタウンから海沿いを時計まわりに島を1周。しかし1周だけでは100kmに満たないので距離稼ぎのために80km過ぎからペナンヒルという急こう配の坂道を登る素晴らしくマゾなコース。
制限時間は18Hours、ヘッドライトやドリンク、携帯電話、赤色点滅灯、笛、防寒具(はじめっから要らないと思っていたが案の定不要だった)、などが必携でスタート前に持ち物検査があった。

土曜日の昼にペナンに移動。夕方まで少し寝て夕飯をO竹さんご夫妻とご一緒してレースに臨む。日本人出走者はO竹さんとワタシだけだった。

スタートは午後9時、ホテルからよろよろとスタート地点へ。ランナーは84km(純粋にペナン島1周)と合わせても数百人しかいないはずなのに、応援やボランティアも含めるとかなりの人数で、夜にも関わらずスタート地点はエライ盛り上がりよう。

そしてスタート、長いお祭りが始まった。土曜日の夜、まだ車道が車でにぎわうペナン島をまずはペナンブリッジ方面に走る。まったく期待していなかった道路規制を地元ポリスが行っておりちょっとビックリ。誰か曰く「大会事務局からお金もらってバイトしてるのかも」とのこと。さもありなん。しかし結構皆さんペースが速い。ウルトラを何度も走っているからわかるけど、最初にとばしてもロクなことは無い。オーバーペースは自滅するだけ。

ワタシは調子がよくないためノロノロ走っていたらどんどん追い抜かれてO竹さんにもおいていかれた。ザックを軽くするためスタート地点ではボトルに水を入れずエイドで充填する作戦だったがこれが完全に裏目に出た。

12.8kmの第1チェックポイント=エイドを通り過ぎたのにまったく気づかず(ゼッケン番号のチェックをされたのは気づいたがそれがエイドとは思わなかった)、そのまま通過。かなりノドが乾いたなぁと思った頃にO竹さんに追い付いたところであれがエイドだったことを教えられ愕然...

しかしこのあたりはペナン空港の海側で普段仕事で車で走る道であり、なんとなく地理が分かる。「あそこをあっちに曲がればコンビニがある」と思うも何故かマラソンコースは逆へ逆へと進む...そちらは工場エリアで店など無い。このままペナンの田舎である南や西側に行ったら、ますます土曜日の深夜に開いている店に出くわす可能性は減る。

「こりゃ渇きでつぶれる!」と思って道端の屋台に飛び込みミネラルウォーターを所望するも「無い」とのこと。ボトルを見せて飲むマネをすると、そこらのバケツにある水をすくって入れてくれようとする。うーむ、まだ20kmも走ってないのにそんなリスキーなことは出来ない。親切心だけ頂いて店を飛び出す。

更に行くとさっきよりはましな屋台がある。しかしそこにもミネラルウォーターは無かった、何故だ! That's Malaysia! その店の水はバケツではなくフタ付きの容器(給水器のようなもの)に入れてあった。それを分けてくれようとする。もう断れない! ボトルに半分ほどもらって口の中で転がし味を確かめながら飲む。その間にO竹さんに追い抜かれた。もう飲んでしまった。あとはお腹を下さないことを祈って走るのみ。と思ったら100mも行かないうちに立派な売店があり、ミネラルウォーターもスポドリも売っていたので2本買う。さっきもらった有難い水はそこに置いてきた。

2チェックポイント:24.6kmは道路脇の一角。そこで水をガブ飲み。凝り固まった肩をストレッチでほぐしていると早くもリタイアしたらしいランナーが車に乗り込んでいた...この時間がおそらく真夜中0時くらい。

しかし肩凝りがひどい。ザックのせいか、いやザックがなくても最近走るといつも肩凝りがひどい。と、こんな田舎道を暴走族か車が50台くらい連なって走ってきた。ひかれそうで怖い。そして最後にパトカーが何台か走っていく。一本道だからあれが引き返してきたらやだなー、と思う。

意外に眠くもなく走れているがスピードはまったく出ない。山中の坂道で久しぶりにお魚さんに会った。ワタシはもう日本に帰国してしまうのでこの人と走るのもこれが最後かな、と少し感慨に浸る。彼は重装備でものすごく明るいヘッドライトを装備しており、GPSをのぞき込んで「もうすぐ次のエイドだよ」と教えてくれた。

第3CP:33.9km。カップラーメンなど食べ物が置いてあるがとても食べられない。持参した「スポーツようかん」を食べたら元気が出た。これはいける!新しい発見に出会った。これからも頼ろうと思った。

ここから次のCPまでが最長区間の15.1km。犬に吠えられながら単調なジャングル沿いの車道を走る。ほとんど交通量は無い。月が見える、そして、初めて見たが蛍が道路の上を飛んでいる。ちょっとした幻想的な雰囲気。それに勇気づけられたわけではないが、そこからはかなりペース良く走り、何人もの先行ランナーを追い抜く。

第4CP:49km。半分終わった、あと残り半分。CPに入る直前にO竹さんの後ろ姿が見えた。結局エイドで10分ほど休んだので、ちょうどそれくらいのタイム差ということ。このエイドからひたすら急こう配が続いていく。まるで箱根駅伝の5区のよう。真っ暗で足元さえ見えない。犬の遠吠えが聞こえる。前を行く2人連れのランナーを見つけて無理やり付いていく。が、頑張り過ぎて追い抜いてしまった。また一人旅を続けるも下りで先ほどの2人のうち1人がピッタリついてくる。結構下りを速いペースでとばしているつもりが最後は置いていかれてしまった。そこで一気に疲れが出て歩きが入る...

ふと左前方に大きなダム湖が。そして午前4時くらいなのに若者たちがどこからかバイクでやってきてダムの前で写真を撮り合っている。異様な光景だ。

前の区間で快調に走った反動もあってか足にきてしまいガクッとペースが落ちる。厳しい時間帯に突入したらしい。ところどころで歩きが入ってしまう。

第5CP:62.3km。ノドの渇きが激しく、お腹はタポタポなのにかなり水分を摂ってしまう。どこのエイドのボランティアも非常にフレンドリーだったけどここのボラはやはり時間的に眠気がピークなのか、みんな反応がイマイチだった。今まで要所要所に配されたボラのお蔭で道を間違えずに来たが、ここのCPを出た直後の大きな分岐点には誰もおらずしばし立ち止って悩んでしまった。

このCPを出てしばらく走ると海沿い、島の北側に出る。気分的にはかなりゴールに近づく(ペナンヒルがなければ)。ひたすら単調な海沿いの狭いコースを走り、歩き、昨年の11月に泊まったリゾートホテルの前も通過してなんとか次のCPへ。

第6CP:71.9km。道路脇から少し下った建物の庭にエイドがある。このちょっとした下りももはやきつい。ここからがペナンヒルの登りだと思っていたら勘違いだった。もう一つ先のCPからだった。精神的にガクっとくる...

午前7時を過ぎて周りもかなり明るくなってきた。ペナン島の地元ランナーたちと頻繁にすれ違う。向こうは朝から気持ちよく快調に走っているが、こちらはもはや10時間以上走ってヨレヨレの状態。と、一人の地元ランナーさんが話しかけてきれくれて次のCPまで道すがら伴走してくれるという。伴走は禁止だったかな? とうつろな頭で考えるも、とにかく必死に彼についていくだけ。お年は50代半ばとのことだが猛者らしく走りが力強い。どんどんペースが上がってウソのように6分/km前後のペースで走り、先行するランナー達を追い抜いていく。ダム湖手前の下りで追い抜かれたランナーにもここで追い付いた。しかし一方で「次のCPはまだですか」と何度も聞いてしまう、精神的に弱っている証拠だ。やっとたどり着いたCPはペナン出張時によく走るルートの突端にあった。この区間は後半ウソのように飛ばして走れた。ローカルランナーさんに御礼を言ってここでお別れ。

第7CP:79.8km。どっかりと腰をおろしてスポドリをがぶ飲み。ボランティアさんから「いいペースだよ」と声がけしてもらえたのが嬉しかった。そうか、かなり制限時間を気にしていたけどそんなペースだったか。

そして、意を決してペナンヒルへ。しかしその入口までがダラダラした登りでまた遠い。いったいどこに登り口があるんだ~、と泣きが入った頃にとうとう発見。「こ、これか...」と驚愕、茫然。そこへトップランナーが駆け下りてきた(写真1)。ものすごいスピード。

とにかく、この登山道の傾斜が凄まじい。ちょっと車じゃ登れないだろうと思えるくらいに坂が急で盛り上がって見える。手でもつかないと登れないくらいに見える。日本だったらこの傾斜で道を作ることはあり得ない! そこを膝に手をつきながらヒーコラ登っていく。前を歩く欧米系ランナーがなにか英語で呪いの言葉を叫んでいる。叫びたくもなるコースだ。親切なことに道路脇の標識がスタートからの距離を教えてくれる。5kmくらい歩いたつもりがまだ2kmだとわかってまたもや茫然。しかし立ち止ると転がり落ちていきそうだ。地球に重力があることが感じられる。

それでも坂道は登りも下りも得意分野のはず。頑張って止まらずに歩く。3.0km、3.5km、4.0km、そしてとうとう前方にO竹さんを発見、ここで追い付いた。かなり疲労している様子で、ふと気配を感じたのかO竹さんが後ろを振り返る。「マジっすかー、この位置で...」と天を仰ぐO竹さんと二人でペナンヒル頂上へ。

第8CP:87.5km。ペナンヒルからの絶景をしばし楽しみ、エイドでココナッツジュースを飲み、涼しい風にかなり吹かれてからよろよろと下り道へ。ここで先行させてもらい、得意の下りをブッ飛ばすも直滑降では角度があり過ぎるため、ジグザクに駆け下りていく。すれ違う登っていくランナーは本当に苦しそう、みんな頑張れ!

登りはかなり時間がかかったけど下りはあっという間。下界に降り立ってしばらく走るとお魚さんとその友人たちとすれ違う。互いにエールを交換しながらハイタッチ。さようならお魚さん、あなたはワタシのマレーシアでのランニング生活において忘れえない記憶を刻んでくれました。

第9CP:95.2km(=第7CP)に戻ってまたどっかりと腰を下ろす。先ほどのボランティアの方が「お帰り!」と声をかけてくれる。

ここからあとは勝手知ったるマイコース、のはずがもう足が動かない。観光客の間だけは走るも、あとは歩きが入る。ちょっと走ってちょっと歩くの繰り返し。そして栄光のゴールへ!と思ったらそこからまた大回りをさせられる。

ゴールタイムは14時間13分。途中までは14時間を切れるペースだったけど最後にがっくり落ちた。ゴール後には待ち構えていた新聞社の写真家(テーさんだったか)にバシャバシャ写真を撮ってもらい、もうすぐ日本に帰ることを伝えた。この方にはレースがあるごとに現れ、ランナーの写真を撮りまくってFBにUPする奇特な方(ワタシはFBやってないので見たことはありませんが)。

ゴール後はしばし茫然としながらO竹さんを待ち、二人でホテルに戻りました。

マレーシアで最初(で最後、おそらく)の100kmマラソン参加でしたが、この大会は初回ながらも運営は素晴らしく、コースはSM的に厳しく、十二分に楽しむことが出来ました。今なら「また走りたい」と思います。とにかく怪我をしなくて良かった。昨年怪我で走れなかったペナンブリッジマラソンのリベンジが出来て良かったです。