2015年5月 鯖街道マラニック 77km 当日

さて当日。午前5時にタクシーで宿を出て、集合場所の台場浜公園へ。そこでサクッと受付、といってもゼッケンをもらうだけ、5秒で終了。昨日の受付は混んでいたとのことでかえって今日で良かったみたい。そしてゴール行きのトラックに荷物を預ける。宿から一緒だった方は今年で4回目の鯖街道。その方はウェストポーチだけで走るらしい。「エイドが充実しているので大した装備は要らないですよ」とのこと。そうは言っても周りを見渡せばみんな結構しっかりしたトレイルの格好と装備。悩む...

結局携行したのは以下。
・500ml×2本のペットボトル、ただし1本は空。
・朝食で食べきれなかった菓子パン×1個
・ゼリー飲料×1個
・チョコ×1本
スポーツようかん×2本(最近手放せない)
・塩飴×多数
・軍手
・新兵器のゲイター(小石や泥よけで足首に巻くもの)
・タオルハンカチ
・ティッシュ
・ウインドブレーカー
・コースマップ
・デジカメ(今回はファンランの予定)
・スマフォ
・現金&保険証

結論から言うとスマフォなんて要らなかった。デジカメ持参していたのに何故スマフォまで持って行ったのだろうか。すでにスマフォを手放せない現代人になっている自分。食べ物も持参しなくてもよかった、と言える。それだけエイドが充実していたし、最長10kmほどエイド間の距離はあったけど食べずにいけたと思う。

格好はサンバイザー、ジップ付き半袖、短パン、普通のランシューズに普通のトレッキングザック。こちらも結論から言うと、舗装路では日差しがきつかったのでサンバイザーよりもキャップの方が良かった。シューズは舗装路が約7割なのでトレシュー(持ってないけど)よりも普通のシューズで良いと思ったけれど、山道では岩肌が露出して結構滑りやすいところもあったので、ソウルがフラットでなく、かつ厚めの方がよかったかもしれない。ザックはめちゃくちゃ左右に揺れた。そのため思った以上に体力を消耗したようで、次回トレイルのあるコースを走るまでには専用ザックを買おう、とレース中に何度も何度も思った。

さて、トラックに荷物を預けてスタート場所の鯖街道起点のある商店街まで10分ほど徒歩移動。そこで写真撮影やら説明やら市長さんのご挨拶やらあって、午前6時にいよいよ鯖街道Aコース(本鯖)77kmがスタート! と、いきなり皆さん結構速いペースで走っていく。6分/kmを切るようなスピード。コースをまったく把握していないけど、どうやら次のエイドまでは10kmでずっと舗装路が続くらしい。天気はピーカン、朝はまだ涼しくて気持ちが良い、いい一日になりそうだ。はじめは街中、すぐに田舎道となって少しずつ登るけれど気にならない程度。しかしどんどん追い抜かれるのは気になる。この大会のランナーはかくもレベルが高いのだろうか。それでもペースを上げることはせずに6分/kmを維持。と、腰に何かを差している女性ランナー発見。よく見るとそれは「けん玉」であった。思わず話しかける、「何故にけん玉...?」。女性ランナーさん曰く「長い距離を走ると疲れてくるので気晴らしに(けん玉を)やるんです。今回は距離が短い(!)けど100マイル(160km)レースのときとかよくやります」だそうです。世の中にはユニークな人がたくさんいるもんだ。
感心したのは各交差点に係員の方々が立っており、ランナーもしっかりと信号や横断歩道を守っていること。周りがそうすればおのずと自分もそうなる。マナーの高い大会のようで、好印象でした。

1A:下根来(10km)到着がちょうど午前7時。たいしてお腹も減っていないけれど、とにかく背負っている荷物を減らすために菓子パンを食べてスポドリで流し込む。今回は毎エイドで写真を撮る予定なのでしっかり撮影。聞けば2A:上根来までの5kmもまだ舗装路とのことで上りの山道をのんびり走る。杉林の向こうから日が差してきて美しい。急な登りですでに歩いているランナーを多数発見。自分は意地になって走るもすぐに右へならえ、体力消耗してはイカンので戦略的歩きに切り替える。

2A:上根来(20km)に到着。この先からいよいよトレイル区間なので古民家のトイレに寄ってから出発、すぐに鯖街道の登り口に到着。ここでいったん撮影。そして新兵器のゲイターを装着。普段からシューズ内に石ころやら砂が入りやすくて難儀しており(ゆるゆるにシューズを履くため)、今回はトレイルコースなので事前にゲイターを購入しておいた。最近はたくさん種類があるようですが、スタンダードなmont-bell品を選択。これのお陰で今回の鯖街道ではまったく石ころが入らず、悩みなく走ることが出来た。ただ、左右1回ずつ外れたけれど。
山道はもう完全に山登り。ほとんど走れません、というか前が詰まって走れない。皆さん速足で歩くのでいいのですが、平らなところは走ってもいいのでは、と思う箇所もあった。と、山中に係員の人が立っていて各ランナーに順位を伝えている。ワタシはぴったり500位。出走者が600人くらい(正確には581名)なので随分と後方にいることになる。ここでやっと分かったのだが、スタートからダッシュしていた皆さんはこの渋滞ロスが嫌で先行したのでしょう。ちょっとやきもきするも基本追い越し禁止らしく、仕方なく自分も速足で行く。まぁ、先はまだまだ長い。
かなり登って広い林道に出たところで先行ランナーを一気に追い抜く。あー、気持ちよし。と、またすぐに山道に入る。今度は下り。結構道幅が狭く岩肌が露出していて滑りやすい、これは危なくて走れない。しばらく前のランナーに付いていると少し前の方に視覚障害者ランナーの方がいる。こんなコースを走っているのか、と内心かなり驚いた。それも自分よりも先行している。前方のサポートランナーが荷物運び用のしょいこを背負っており、それにしっかりと掴まっている。後方のサポートランナーが足元の地形を細かく指示している。それでも視覚障害者ランナーの方が木の根っこにつまずいて片足が斜面からずり落ちていく危ない場面もあった。見ていてちょっと怖いけれどペースは速かった。次の林道に出たところで声をかけて先行させて頂いた。
一気に下って川に出る。雨のせいで増水しているのか、足を濡らさずに渡ることが困難で、皆さん覚悟してシューズを濡らして渡っている。なんだか本格的なトレイルコースみたいで楽しいぞ。

3A:百里小屋(25km)到着。野原の一軒家みたいなところにあるエイド。井戸があって冷えた水が美味しい。そうめんがあるらしくしばらく待つも「追い付いてませ~ん、そうめんはまだ茹でてます。時間がかかるのでしばらくお待ち下さ~い」と言われて諦める。やはりスタートダッシュすべきだったか。代わりにキュウリの漬物をしこたま食べて走り出す。次のエイドまで舗装路10kmと聞いて、ゲイターを外し、500mlボトル×2本にしっかりドリンクを補充して走り出す。
驚くのは、どのエイドで尋ねても次のエイドまでの距離と道路状況を正確に教えてくれること。たいていの大会のボランティアさんは自分のエイドのことだけで、次のエイドまでの距離など分からない人が多いけれど、この大会はボランティア回数が多いのか、皆さんしっかり情報提供してくれて初参加の自分には非常に有難かった。
いよいよ暑くなってきたコースを5分台/kmで飛ばす。山登りはほとんど歩きだったのでいまだ疲労感はなく、舗装路を快調過ぎるくらいに走って先行ランナーを追い抜いていく。エイドよりも前で追い抜いたランナーをまた追い抜く。ということは自分がエイドに長居し過ぎたということ。自分は結構長居するタイプなので、同じ人を3回も4回も追い抜く、ということはよくある。
と、絶妙な場所に私設エイド発見。他のランナーの会話を聞いたところによると、この二人の姉妹が毎年このエイドを開いているらしく、もう何年もお世話になっているランナーもいる様子。「お姉ちゃん、何歳になった?」「もう高校生です(と確か言っていた)」「大きくなったなぁ、美人になったなぁ」とやけに会話が盛り上がっている。

4A:山本酒店(35km)に到着。暑いので頭から水をかけてもらう。以降すべてのエイドで頭に水をかけて頂いた。次のエイドまで舗装路5kmと近いため、ここにはあまり長居せずに出発した。
第一関門(37km)地点では胸に「スイーパー」というビブスを付けたランナーが複数立っていた。思わず「スイーパー、怖い」と言ったら一人のスイーパーさんから「まだまだ、まだまだ大丈夫ですよ」と言われた。制限時間が午前11:30。自分が通過したのが10時半前だったと記憶。
かなり飛ばし過ぎて自分でもイカンなぁ、あとで疲れるなぁ、と思っているうちに本当に疲れてきた。かなりノドが渇く。今週ずっと寝不足だったせいもあってやっぱり眠くなってきた。飲み物を取るのにわざわざ一度ザックを外すのが鬱陶しい。そしてまたザックを背負うときに結構な頻度で左手首の時計バンドに引っ掛かる。肩もだいぶ凝ってきた。前のランナーのザックが走るたびに随分と揺れており、あれじゃ疲れるだろうなぁと思う。試しに自分のザックを走りながら触ってみたらやはりかなり左右に揺れている。それを手で押さえて走ってみたらかなりラク。あー、家帰ったら揺れない便利なトレランザック絶対買おう!と何度も思う。

5A:久多(40km)に到着。相変わらずお腹は空いていないけれど、次からまたトレイル区間なので無理やりおむすびを頬張るも食べ切れず。ここでゲイターを再装着、また山中に入っていく。やはりこの山道でも前が詰まっており自分のペースで進めない。よく見ると色の異なるゼッケンを付けたランナーがいる。Bコース(半鯖、43km)の後方に追い付いたようだ。道幅が広くなったところでちょいちょい追い抜かせて頂き、八丁平あたり道が広くなったところで見栄を張ってかっ飛ばしてしまう。先行するランナーさんが時計をしきりに気にしているので聞いたところ「今のペースなら大丈夫ですけど、歩き出すとあっという間に制限時間が危なくなりますよ」と言われる。そいつはまずい、と上り坂も気合いで走って更に疲れる。

6A:二ノ谷(49km)到着。冷やし飴、という不思議な飲み物を頂き、次のエイドまでの舗装路3kmを走る。前半に比べてエイド間の距離が短くなってきているのが心憎い配置で嬉しい。

7A:大見(52km)到着。3kmとはいえ、疲れてきたのか近くは感じなかった。ここから最後のトレイルコースに入るため、再々度ゲイターを装着。つけたり外したりするのは手間だけれど、つけっぱなしで舗装路を走るのもどうかと思うので致し方ない。
ラストのトレイルはきつかった。大きな石がごろごろしているため上りはかなり走りづらい、というか危なくて走れない。ちょっと走ってちょっと歩く、をひたすら繰り返してなんとか上まで登るが、そこで力尽きた。平らな道でも足が止まる。追い抜いてきたランナーに抜き返される。歩いてはイカンと思いなおして、ヨタヨタと走って次のエイドへ。この区間は本当につらかった。

8A:杉峠(57km)にやっとのことで到着。これでトレイルは終わり、あと20kmはひたすら舗装路を下ってゴールに向かうはず。ここで食べた豆腐そうめんは絶品でした。「そうめん いっぱい食べてね」と書いてあったけれど、言われるまでもなくお代わりした。ここで半鯖に出走しているルビーさんに遭遇。「今ここに居るのは、全鯖ランナーとしては速いの? それとも遅いの?」と難しいご質問を頂く...
次のエイドの鞍馬までは7km。ここからの激下り坂、さてどーしようか、と思いながらも足がついつい動いてしまい、いつもの下りかっ飛び状態になってしまう。これをやると下り切って平地についてから反動が来るんだよね、と自分でわかってはいるものの足が止まらず気持ちよく先行ランナーを追い抜いていく。このまま鞍馬まで下り坂が続くとさすがにもたない、と思っているうちに鞍馬に到着してしまった。

9A:鞍馬(64km)。何故か綺麗なお姉さんたちがエイドの前に立っている。「凍ってますよ」と教えてもらったグレープフルーツは絶品でした。鞍馬はさすがに観光客が多く、多数のランナーが駆け下りてくるのを見て皆さん驚きのご様子。外国人観光客に何故か「オメデトウゴザイマス」とのエールを送られる。ニュアンスは十分伝わりましたよ。
ここからは交通量が格段に増える。下りをかっ飛ばしたせいで足はガクガク、もはやまったくスピード出ません。おそらく7分/kmよりも遅いペースでヨタヨタ走る。しばらくの間、女性の本鯖ランナーと競るも次第に置いて行かれる。よく見れば彼女はまったくの手ぶら。そりゃ手ぶらの方が早いよ、と思うけれどあの山中を手ぶらで走ってきたのはかなり勇気と自信のある証拠。なかなか真似出来ません。

10A:市原(67km)にほうほうの体で到着。ここのエイドの名物はマーマレードパンなるも、自分はマーマレードを食べる習慣が無いのであっさりパス。スポドリだけガブ飲みしてストレッチしながら歩き出す。さて、走ろうかね、と思った矢先にスマフォが鳴る、家族からだ。
「こんなときになんだろう」と出たところ、「今どこ?今日は夕飯要る?」と気の抜けた質問。「あのねー、まだ走ってるんですけど。いま鞍馬から降りてきて...体調悪いから夕飯要りません」「いーねー、鞍馬!」とお間抜けな会話をしている間に何人ものランナーに追い抜かれてしまったではないか。
少し行ったら私設エイド発見。なんと、かき氷屋さんではありませんか。見れば「鴨川走友会」の皆さんが忙しそうに、でも非常に手際よくかき氷を作って、コーラも配ってくれている。自分はかき氷を食べる習慣も無いので、そのままコーラに氷を入れてアイスコーク、3杯くらい飲んでしまった、ゲフー。普段飲まないコーラもウルトラでは欠かせないアイテム。最近の大会ではコーラを出してくれるエイドが多くなって嬉しい。このエイドは皆さん明るくて本当に良かったです。
さて、とうとう鴨川沿いに出ました。車道から外れて川沿いを走る。あとはただただ川沿いを走ればゴールの出町柳に着くはず。「これ、鴨川ですよね?」と思わず係員の方に聞いてしまったのは疲れている証拠。ここからあと約5kmでゴールだ。

11A:西加茂(72km)に到着。橋の下に設置されたラストエイドで美味しいミニトマトを頂く。ラストエイドはシンプルメニューが多いウルトラ大会がほとんどですが、この鯖街道マラソンでは最後まで美味しいものが食べられて嬉しい。川沿いの道は一般の方々が多く、さすがにヨレヨレと走るのはまずいので頑張ってペースを上げる。結構な頻度で応援も頂く。途中に小さな私設エイドがあったり、何故か熱燗とっくりやパンダだったか、仮装のお姉さまたちが待っていて全員とハイタッチ、元気をもらいました。あと3km、あと2kmと、どんどんゴールが近付いてくる=鯖街道が終わる。もうすぐマラニックが終わってしまうさみしさ2%、早く終わってくれという心の叫び98%という二つの気持ちが混ざり合う中、あと1km地点でiPad持って自分撮りしている人を発見。代わりに撮ってあげました。聞けばレース前にスマフォが壊れたので代わりにiPadを持って鯖街道出走したとのこと。重くないのでしょうか。やっぱりいろんな人がいるなぁ。

栄光のゴールタイムは10時間06分34秒。
581人中、187位。ということは最初の山中から313人を抜いた計算。もうちょい頑張れば、毎度毎度写真撮影していなければ10時間は切れたかもしれませんが、ファンランだったのでタイムは気にしません。完走出来ただけでOK。

預けた手荷物と賞品の焼き鯖とトートバックを手際よく頂く。電話でさっさと帰って来て、と言われたのを思い出して休む間もなく着替えて出町柳駅から京阪に乗って帰宅しました。

初めての本鯖はとても面白かった。これでコースや雰囲気なども把握したので次回以降の攻略方法は立てやすいと思う。でも年々大会の人気が上がっているようで、果たして来年以降もエントリー出来るかは不明。せっかく関西に居る間に、また違う大会にも出てみたいとも思う。

鯖街道マラニック、とても良い大会でした。ロードとトレイルが程よくミックスされたコースは走っていて飽きが来ませんでした。日本の自然を存分に味わうことが出来ました。エイドのメニューもボランティアの方々も素晴らしかった。「こうすればもっと良くなるのに」と思うことの無い、完成度が高く、でも手作り感にあふれた素敵な大会でした。さすが20回も続けていらっしゃるだけのことはあります。ちなみに完走賞の焼き鯖が帰宅後の夕食のテーブルに上がったのは言うまでもありません。