2016年2月 紀州口熊野マラソン

紀州口熊野マラソン、走ってきました。結果、最も記憶に残る大会の1つとなりました。

風邪をひいたり、夜10時過ぎまで残業してそれから終電まで立ち飲み付き合ったり、自制効かずにカレー大盛りを夜中に食べてしまったり、と結構散々な1週間でした。それでも土曜日だけはゆっくり休んで、マッサージにも行って翌日のレースに備えることが出来ました。

当日は午前4時起きの5時出発。朝食はお餅を2つ食べました。ラン仲間の方をピックアップして車で会場に向かう。まったく渋滞なく、楽しくおしゃべりしている間に現地到着、時間は午前7時半。早かったので会場まで徒歩圏内の駐車場に停めることが出来た。受付してのんびり準備していたらあっという間に9時半になった。そういえば受付会場にTV撮影でお笑いのHi-Hi(ハイハイ)が来ていたけれど、関西での知名度はイマイチなのか、誰も知らなそうだった。「あの人たち速いの?」って、いや、たぶんランナーではないと思いますよ(笑)。

貴重品だけ預けてスタート地点へ急ぐ。フルの参加者は2300名と少なめながらも「3時間-4時間」のグループは大集団だったので、「2時間半-3時間&陸連登録」のグループに並ばせて頂く。そのあたり、特にうるさくないのか緩めの大会で有難かった。

ストレッチもそこそこにスタート地点へ移動。一番前のグループのお陰でスタートラインは目の前、と絶好のポジション確保。天気は晴れ、気温はちょっとだけ高いかも、でもほぼベストコンディション。走る格好は、キャップにタンクトップ+アームウォーマー、薄手の手袋にタイツ+ショートパンツ。シューズはターサージールWide。携行食はスポーツ羊羹1本+飴数個。本日の目標は、30kmまで4:15/kmで行き、あとはそのときの余力次第。3時間5分を切って自己ベストを出すのが最低のノルマ。

午前10時にフルマラソンスタート!有難いことに10秒でスタートラインを切る。まわりにつられて猛ダッシュ!陸連登録ランナーをかいくぐってどんどん前に出る。コースは噂どおり確かに狭いけれど、すぐに走り易い位置まで上がることが出来たので問題なし。

手元の時計で5km通過が21分ほど、いいペース。とにかく周りに引っ張ってもらいながら4:15/kmよりも遅れることなく走り続けたい。コースはまず反時計周りに回ってスタート地点近くまで戻り、一つ目の折り返しを通過して対抗から来るランナーを左手に見ながらまたスタート付近に戻っていく。ほぼ1キロごとにキロ表示が設定されており、表示の下にメッセージが書いてある。「自分に負けるな!」ってよく目にするけれど、自分に勝つ自分と負ける自分がいるわけで、結局勝つのも負けるのも両方とも自分なのよね、と禅問答のようなことを考えながら走る。

と、いきなり10km地点が出てきてちょっとびっくり。タイムは42分くらい。設定より30秒の貯金、わずかに速過ぎるけどいい感じ。公認大会なのでキロ表示は正確なはず。このまま押して20kmを84分で通過したい。

石畳もあってちょっと走りづらい川沿い歩道を進み、スタート&ゴール地点をまた通り過ぎて、自分らの駐車場の前も越えていく。あっち行ったりこっち行ったりで、もうすでに何処を走っているのかわからなくなる複雑なコース設定。大半が川沿いで基本的にフラット。幾つかきつい上り坂もあったけれど、上り切るとすぐに同じくらい下るので、下りでタイムを取り戻せた。日が当たると少し暑いがまったく気にならない。日陰は寒くてちょうど良い。

エイドは全部で13箇所、すべてに水とスポドリが置いてあるのは有難かった。食べ物はバナナ、パン、紀州名物の梅干しがあったけれど、最後まで空腹を感じることなくスポドリのみを飲み続けた。

15km地点、好調に走っていたところいきなり左足ふくらはぎに痛みが走る。「あっ」と小さく声を上げるも、すぐに痛みは治まったが張りが残っている。すでに自分の限界ペースで走っているということか。

20km通過が1時間23分30秒くらい(41分30秒)、更に貯金が出来た。ハーフの通過が1時間28分くらいか。これは...狙える、サブ3!とにかくこのままのペースで30kmまで押したい。スポーツ羊羹半分をかじって気合いを入れる。

2つ目の折り返しを越えてしばらく川沿いを走る。スタートからもう何十回時計を見ただろうか、とにかく4:15/kmよりペースが落ちないように、かといって速過ぎないように4:10-12/kmを維持して走る。川の分岐点で右折して長い折り返しに入る。対岸を走るランナーは間違いなくサブ3ペースのはず。気持ち的にすぐにでも折り返したいのに25kmの折り返し地点が遠い...目の前にいた3人ほどの集団に追い付いて、しばし風よけにさせてもらいつつ少しずつ前に出るも、そのうちの一人が必死に喰らいついてきて追い抜いていく。自分もすでにいっぱいいっぱいなので敢えて追わず、ひたすらイーブンペース維持。

やっとのことで25km地点、折り返したところで今度は右足ふくらはぎに軽く電気が走る。これで両ふくらはぎに痛みが来たけれど、だからどうした、今ここでそんなことは気にしていられない。すでにスタートからアクセルずっと踏みっ放しで限界状態なのだから、どこかが痛くなったって不思議はない。先ほど追い抜かれたランナーを抜き返して、また違うランナーに抜かれたり抜いたりを繰り返す。正直、25km地点を過ぎてかなり苦しくなってきており、気持ち的に早く30kmに到達したい。30km通過の目標タイムは2時間6分。それならば残り12kmを54分=4分半/kmで走ればサブ3を達成出来る計算。195mは根性でカバー出来るはず。

だいぶ前方に30km地点が見えてくる。前半は、あっという間に1キロがやってくる感覚だったけれど、かなり疲れてきたのか今は1キロが長い。通過タイムはほぼ2時間6分、希望時間どおり。まだサブ3いける!

あー、でもかなり苦しくなってきた。4:10/kmをまったく切れなくなってきた。少しペースが落ちたような気がする。貯金を食いつぶす走りはあとが怖い。このままでいけるのか、酸素の足りない頭で何度も計算を繰り返す。自分的にこのペースはフルマラソンというよりは、スピード練習の感覚。「サブ3を達成するにはこのままのペースでゴールまで走り切らないといけないのか。はっきり言って息抜く暇がまったくないじゃん」と弱気の虫が頭をもたげ始める。

思わず隣の長身ランナーさんに話しかけた。「このままだとサブ3、厳しいかもしれませんね」「そ、そうですか?」と答えてくれたランナーさんはそこから少しペースを上げた、というか正確に言うと4:20/km台まで落ちかけたペースを元に戻してくれた。

有難いけれど、猛烈に苦しい。足が動かない。これについていくべきなのか、ついていったら途中でつぶれてしまうかも。でも、でも、もしここで離れたらもう気持ちも切れて一気にペースが落ちて、サブ3を達成出来ない気がする、というか出来ない。今はとにかくこのランナーさんに引っ張ってもらうしかない。切れそうな気持ちを紙一重でつなぎとめる。文字通りの正念場。

走りながら次々と考える。今まで数々走ったマラソンで今が一番苦しい瞬間じゃないか?もっと苦しい経験ってあっただろうか。今ここで思わず歩き出したり、立ち止まったりしたらどうなるんだろう。「30kmまでサブ3ペースで、そこから歩いちゃいました」って、ネタになって笑ってもらえるかな、と考えてしまう弱気の自分。「いや、そんなこと許されるわけないでしょ」と冷静な判断を下す自分。そんな相反する二人の自分を遠巻きに眺める第三者的な自分。あー、もはや酸欠による自己分裂状態なのか、はたまた幽体離脱か!

とにかく、またこんな苦しい目に遭いたくない。ここまで30kmも苦しんできたのを無駄にはしたくない。泣き言は封印、マイナス思考回路を強制シャットダウン。ペースを維持して前を追うことに集中。残り半分のスポーツ羊羹をかじって根性を入れる。

川沿いコースを左折、橋を渡ってスタート&ゴール地点に戻っていく。呼吸はそれほど苦しくないけれど肝心の足が動かない。先週の大阪ハーフの疲れが残っているのか。いや、もうここまで来たらそんなことはまったく関係ない!

ときたま吹く向かい風が強くて一気にスピードが落ちる。「風よ、今だけは吹かないでくれ!」と何度も念じながら走る。もはやどこの地点だったかはっきり覚えてはいないが、たしか35-40km間のキロ表示で、松岡修造が「諦めるな!」と叫んでいる写真があった。そこでムチが入った。最後のエンジン、わずかに残っていたド根性に点火!ずっと自分を引っ張ってきてくれた長身ランナーさんのペースが落ちてきたところをかわす。すれ違う瞬間に気持ちを込めて「(僕らサブ3)いけます!」とエールを送る。

見えてきた40km地点、通過タイムは2時間49分。残り11分、油断しなければ、コースアウトしなければ、大ゴケしなければいけるはず。でももう足が限界。あと2km未満、ゴールらしきものがいまだ見えない、おかしい。ゴールは何処なんだ!と、右前方にそれらしきものがやっと見えた。川沿いコースを外れて右折、最後のストレート。「サブ3、いけるよ!」と沿道から声がかかる。時計を見ると59分を切れそうだ!やっと、今やっとここで確信した、「今日、サブ3を達成出来る!」達成したらどんな気持ちになるのだろう、あと数十秒でそれが分かるはず。世界が変わる?たぶんそこまでじゃないと思うけれど、もうめちゃくちゃ嬉しいはず。絶対間違いない。

ダーッ!! とガッツポーズでゴールに駆け込む...

タイムはネットで2時間58分36秒、グロスで2時間58分46秒。
グロスでもサブ3を達成出来たことが嬉しい!ちなみに自己ベストを約7分更新。

シューズのチップを取ってもらい、ふと思い出して後ろを振り向く。長身ランナーさんがすでにゴールしており、椅子に座りこんでいる。おそるおそる声をかけてみる。「はい、私も達成しました、サブ3!」との嬉しいコメント。二人でがっちりと握手、御礼を述べる。「30km地点から引っ張って頂いて本当にありがとうございました。あれがなかったらもう絶対に、絶対にサブ3達成出来ませんでしたよ」話しているうちに思わず涙声になってしまった。長身ランナーさんも「最後、声かけて頂いて、あれで...ありがとうございました!」と言ってくれた。再度握手、お互いの健闘を讃え合った。

11年前、富士五湖ウルトラで初めて100km走って、完走して、泣いた。あれからいろいろあったけれど、走り続けてきて良かった。今日達成するとは思わなかったけれど、よくここまで来たなぁ、としみじみ思いました。

今回サブ3を達成出来たのは、体調、気象条件、コースの難易度、そしてスタートで並んだ位置、すべて好条件が重なったからだと思います。

先月1月は初めて月間330kmも走った(六甲トレイル45km含む)。4:15/kmでの30km走、直前の大阪ハーフで4分/kmで走ったことも効果があったと思います。

なによりも、毎週火曜日の長居公園練習会でレースペースをイメージした練習が出来たことが一番大きかった。やはりサブ3を達成するにはレースペース以上のスピードトレーニングが不可欠だと思います。

体重は...61kg止まり、減量目標の58kgまでは落とせなかった。体脂肪率は19-20%のままだけれど、これはあまりスピードとは関係なかった。この1年間、断酒した効果もあったはず。お菓子は最後まで止められなかった(笑)。

次は何を目指そうか。
とりあえず5月の萩往還250km完踏、そして100kmでのサブ10達成。この2つが次の目標です。

今は、ただただ、ほっとしており、しみじみと喜びを味わっています。

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