2016年5月 えびすだいこく100kmマラソン

初ウルトラから11年、一生懸命ネットでウルトラの大会を検索してコツコツと一つずつ参加、その時から出場を決めていて最後に残った100km大会がこの「えびすだいこく100kmマラソン」。競走ではなくマラニック的なゆる~い雰囲気で、当時の参加料はウルトラでは珍しい4桁でした(今は5桁ですが)。 

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その憧れの大会、楽しい遠征になるはずが、直前に海外出張が入ったりなどして多忙で、萩往還で傷めた足指の回復状況も気になり、かなりテンション低いまま松江に向かうことになった。大阪からバスで約4時間40分、意外に遠い。松江に来るのは3、4度目か、山陰の綺麗な町で良い印象がある。松江駅から市役所前まで市営バスで移動、そこから今度は大会バスでスタート地点の美保神社まで片道1時間の旅。なんだかずっとバスに乗っている。スタート地点で前日受付を無事済ませると「ありがとうございます!」とスタッフが何度も大声を出すのに驚く。何かと思えば、この大会のユニークな「お土産持参企画」で、ランナーから大会ボランティアへの差し入れを募集しており、ランナーから差し入れをもらうたびにスタッフ一同が御礼を言っている、面白い。そんなの知らなかった。知ってたら自分も何か持ってきたのに。後で見たらしっかり大会要項に書いてあった。

もう少しゆっくりと周辺散策したかったけれど、松江への帰りのバスが出るのでスタート会場での滞在はたった15分でバスに乗り込む。大会事務局にはもう少し滞在時間を長くしてもらうようお願いしたいところ。そういえば何故スタート地点付近の宿にしなかったのか、松江駅の方が選択肢が多かったからか、もはやまったく記憶にない。大会の人気が上がって昨年からか?抽選になり、幸いにも当選して急ぎ申し込んだはいいが、情報収集をしないまま現地入りしたため皆目勝手が分からない。今思えば当日受付もあるので、もっと遅く大阪を出てもよかったのかもしれない。

とはいうものの、松江でやりたいことが一つあった。ネットで見つけたワラーチのお店がちょうど松江にあり、事前に連絡して訪問。そこのオーナーさんからとても楽しいサンダル話を聞きながら足型を取って頂き、30分程で早速一足作って頂いた。「今はワラーチで走るのが楽しく、もうシューズは履けません」とのことで、私も楽しみになってきた。これでマメや水ぶくれ、爪剥がれとお別れ出来るかもしれない。「早速、明日のえびだいで履きますか?」と言われるが、さすがにいきなりは迷う。紐が切れても怖いし。とりあえずお店から松江駅までの帰り3kmを試し履きした。というか、バス停で待てど暮らせどバスは来ず、よく見ると土日の終バスは1時間前の17時台でに終わっていたので、慣れないワラーチで30分以上歩くしかなかった…。初めて履いてみた感想は、指又が痛い。慣れるのは結構時間が掛かりそう。

さて、大会当日は午前2時半起床、3時40分の駅発大会バスで再度スタート地点に向かう。「混んでいる」と言われた当日受付は特に混んではいなかった。受付2階でゆっくり待つ。天気予報は午後から雨80%、半袖かノースリーブか迷った挙げ句に肩凝り回避のためノースリーブ&アームウォーマーを選択。下はハーフパンツ、適当にタンスから引っ張り出して持って来たらポケットは小さなのが一つだけ。モンベルウインドジャケットを丸めて突っ込んだらもうパンパン、何も入りません。これは困った。問題の足指は、皮が生え替わったばかりの右足小指をしっかりテーピング、靴下は五本指ソックスを買って初めて本番で履いてみる。昔試したことがあったけれど、その時は足に合わなかったが、今回は足指を守るために敢えて履く。足指守るためならなんでもする! シューズは、萩往還を終えてすぐにニューバランスの幅広タイプを買った。しっかりと専門ショップで試し履きしてからネットで買ったのに、届いたシューズを履いたら微妙に足指が当たって気になる…何やってんだ、自分。結局、今回は履き古したアティゼロのボストンブーストを持参。まだこちらの方が作りが華奢で足指に優しい気がした。そして秘密兵器は馬油、義母から古いのをもらって足指に塗りたくる。ワセリンはすぐに落ちてしまうが馬油は長持ちするらしいので、今回採用してみた。大会要項を読むと、全員の荷物がいったん55km地点の鹿島に送られ、そこで一度ピックアップのチャンスがあるらしい。いちいち送る荷物の仕分けをしなくてよいのは大変有難い。
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午前5時半のスタート直前に外に出て荷物を預け美保神社を軽く参拝、少し離れてスタートセレモニーを見ているうちに号砲。足指を気にしながらゆっくり走り出す。左側に海を見ながら少しずつ前を追い越していく。The 4分半倶楽部のSさんが沿道で応援していたのでご挨拶。5km地点を越えてから右折して細い山道を上り始める。そして緊張の下り坂が出現、こわごわとぎこちなくガニ股気味にゆるゆると下る。なんとか足指は大丈夫なようでほっとする。それにしても下り坂って、走るとこんなに速く下れるんだ(笑)。意外にも今日は結構調子いいかも、なんて付け上がっていたらすぐに太ももが痛くなってきた。しょうがない、だってこの2ヶ月、回数にしたらほとんど走っておらず練習不足なのは明らか。スタートから10km地点までエイドがなくて苦しかった。「エイドリア~ン!」って書いてあるTシャツランナーを見て笑った、自分もアレ欲しい。

さて、今回の目標はズバリ完走。足指を守って無事ゴールまで行ければ御の字。ペースはとりあえず6分/kmを少し上回ればよい。この大会、5kmごとに距離表示はあるが、かなりアバウトっぽい。目標が完走なのでタイムは測っていないが、確か10km通過が57分くらいで、20km通過が1時間55分くらい。雨予報がなぜか快晴、気温がどんどん上がってきており、エイドにて頭から水を被る。「今日は夜まで雨降らないかもね」とスタッフのおじさんは言うけれど、さすがに当日朝の予報は外れないだろう。天気予報を信じずに痛い目に遭った萩往還のことが頭から離れない。いつもならば暑いのはウェルカム、望むところだけれど、今日はすでに筋肉痛発症しており、ちょっと弱気。案の定、午前8時くらいから雲が出て来た。曇りが一番走りやすい。お昼から雨が降る前にどんどん行こう、と思ったらもうポツポツ来た、ちょっと早くないですか、気象庁さん?蒸し暑いから小雨程度ならジャケット着なくても十分。今大会で最もきついらしい45km地点の島根原子力発電所裏の片句の山越えに取り着くも、さすがにこれは上れません、と、あっさり諦めて歩く。それでも周りのランナーは黙々と走って上っていく、何人かに追い抜かれる。皆さんサブテンレベルのランナーなんでしょうねぇ。いつもなら上りでも出来るだけ走るのですが、今日の自分は筋肉痛ですでにヘタレなので歩かせてもらいます。その間に雨が強くなってきてジャケットを着込む。坂が終わっても走り出す気になれない、あー、なにか気分転換してこの状況打開しないとダメだ。

50km手前の片句エイド到達が4時間40分くらい。タイム自体は悪くない。トイレに行ってウダウダして、ちょっとお腹が空いたのでオニギリを食べてみたらふっと活力が湧いてきた。お、やる気出て来たかも、狙ってみるか、まさかのサブテン!よっしゃ、とここから5分半/kmをキープして走り出す。すぐに出て来た50km地点の通過が4時間47分で、6分/kmで換算するとサブテン達成には13分の貯金がある。要項によれば今年は土砂崩れによるコース変更で、ここからフラットな道が続くはず。作戦としては70kmまで5分半/kmで走って貯金を増やし、70-80kmは6分/kmを維持、80kmからゴールまで7分/kmで走ってもギリギリいける計算。かなり危ういけど(笑)。

ひたすらフラットなコース、かつ小雨という記録達成を狙うには絶好のコンディション。50km地点からGPSを作動させて小まめにペースをチェック。あと20kmくらい5分半/kmで走れるだろ、と自分に発破をかけながら走る。55km地点の荷物受け取りはパス。せっかく重いザックを持ってきてくれたボランティアの女子学生に「要りません!」と走りながら伝えたらものすごくガッカリしたように見えた。あー、せめて笑顔で御礼してからお断りすればよかった、余裕なくてゴメンね。

60km地点での貯金が16分。宍道湖沿いの車道に出てからは狭い荒れた歩道で走りづらくなったうえに、信号が多くてやたらと止められてしまう。70km地点で貯金は18分まで広がった。でも油断したらあっという間に貯金を吐き出してしまうから気を緩めてはイカン。雨が降っているのに結構ノドは渇くし、暑いから頭に水をかけるし、筋肉痛の太ももにも水をかけないといけない。各エイドで数分間費やしてしまい、その度にせっかく追い抜いたランナーにまた先行されてしまう。あー、バテてきた。コースは単調だし、ずっと雨だし、精神的につらくなってきたので、数は少ないけれど周りのランナーに話しかけてみる。すると「80km地点まだですよね?」と逆に聞かれてしまう。苦しいのはみんな同じなんだ。道路と並行して走っている線路の踏切を右に渡ったところにあった80km地点表示。気になる貯金は18分を維持。減っていると思っていたので意外に思いつつ嬉しかったけれど、まだ油断は出来ない。このままもう少し6分/kmで走り続けたい。エイドもあるし、信号もあるし、疲れて立ち止まってしまうかもしれないので、1秒でも貯金が欲しい。歩きたい、と思う自分に鞭打って走り続ける。今回はもうサブテン達成しなくてもいいや、と思う自分と、今回が最大のチャンスだろ、と己に言い聞かせる自分がいる。

しかし、あー、もうホントにバテできた。信号でスタッフに一時停止させられるのがむしろ有難い。当たり前だけれど、後ろから来る元気いっぱいの100km駅伝ランナーにガンガン追い抜かれる。道路表示でゴールの出雲大社まで17kmと出た。いつもの大泉緑地コースで考えるとあと6周、それならばいけるはず。でも太ももの筋肉痛がいよいよ酷くなって立ち止まってしまう。ガードレールに両手をついて、肩で息をしながら一休み。バテるととにかく1kmが長い。頻繁にGPSで距離確認してしまい、そして思ったよりも全然進んでおらずにがっかりする。いつの間にか雨がかなり強くなり、全身びしょ濡れ。足指は、テーピングした右足小指は大丈夫だが、ノーマークだった右足中指、そして左足親指の爪が剝けかけているのが感触で分かる。でもこの程度の痛みなんか、もはや痛みのうちに入らない。

待ち焦がれた90km通過時点での貯金が18分、まだ維持出来ている。本当だろうか。これなら残り10kmを7分/kmで行っても十分お釣りが来る。ここでサブテンを確信した。思えば初めてのウルトラを富士五湖で走ってから苦節11年、と思った瞬間、不覚にも嗚咽と涙が出た。マジすか、いきなりのことで自分でもビックリしたが嗚咽が止まらん、サブテンて…。慌てて手で涙をふいて心を落ち着ける。大雨が降って顔も濡れており、周りに誰もいなくてよかった。初ウルトラを完走したときの感動が甦り、この11年間、挑んでは何度も跳ね返されてきたサブテンの壁を今乗り越えようとする喜びにむせぶ。10時間台は何度も出したことがあったが、晴れ男のせいでいつも暑いレースだったからか最後の一歩が届かなかった。今日は雨が幸いした。冷静に考えてみると真剣にサブテンを狙ったのは過去2回くらいしかなかったかも(笑)。

もう太ももが痛くて走り続けられない。時計を見ながら立ち止まり、貯金を有効に使いつつ前に進む。95km地点でまだ15分ほどの貯金あり。しばらく歩くか、と思ったがゴールが近いせいか何人もの駅伝ランナーが自分のチームのアンカーを待ち受けてゴールまで団体で走っており、それに元気づけられてこちらも何とか走ることを維持。そして出雲大社前に到着。大勢の観光客と一緒に交差点で信号待ちをして、横断歩道を渡って100メートルほど進んでから右折、ゴールまでの直線が気持ちいい。ゴールタイムは、なんと9時間45分25秒、やりました、初のサブテン達成、当然の自己ベスト更新!
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ゴール後のドリンク&かき氷コーナーではスタッフの皆さんが完走したランナーのために大声で万歳三唱してくれる、嬉しくて自分も万歳!完走証も取りに行かずとも持ってきてくれた。その後は提携している旅館で荷物を受け取り、お風呂に入って冷えたカラダを温めて、昨日新調したワラーチを履いて駅まで歩く。雨が降っていなければ出雲大社を観光したかったけれど、今日はおとなしく帰ろう。
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振り返ってみると、スタートを除けば終始気温は低く、走り易いコンディションでした。一番きついコースが土砂崩れで迂回路になったのも幸いしました。最後はちょっと距離が足りなかったような気もします(笑)。えびすだいこく100km、さすが老舗の大会だけあってエイドもしっかりしており、スタッフの皆さんも明るくて安心感安定感のある大会でした。晴天だったらレース後半の宍道湖沿いルートは相当きつかったと思う。

期せずして達成したサブテン。今年2016年は2月にサブスリー、5月に萩往還250km(実際はコース短縮あり)、そして同じく5月にサブテン、とランナーとしての大目標を3つも達成出来て嬉しい限りです。次の目標は...とりあえず来週の奥武蔵ウルトラ78kmで10回目の完走を果たして、奥武蔵ウインドの称号とグリーンゼッケンをゲットしたいと思います!