2016年5月 山口100萩往還マラニック 250km:その5

すでに日が高く昇り、最終日は暑くなりそうな予感。足指激痛のため下りは絶対に走れないことを考えると、平地と上りである程度距離を稼いでおく必要がある。もうCPは無いので積極的に写真を撮る必要もない。ショルダーポケットの携帯をザックに入れ、代わりに折り畳んだ地図を差し込む。ここからは本当に距離と時間との戦いであるため、間違いなく何度も地図を見返すだろうからすぐに手に取れる位置がよい。チーム山口の6人はここからしっかり走るとのことでいったんお別れした、というかあっさりとおいていかれた。コースがまったくわからないため、前方を走るランナーを視野に入れて進む。陶芸の村公園からいきなりきつい下りでヨチヨチ歩きしか出来ない。下り切って直進、橋を渡り大きな交差点を誘導員スタッフ(久しぶりに見た)の指示に従って左折、しばらく直進してまた大きな橋を渡ったところで右にあるセブンイレブンでペットボトルを1本購入。往還道=山道に入ると自販機もないため、暑くて長いであろう先のことを考えると安全のためボトルは2本持っておきたい。

往還道に入る前の旧村田蒲鉾店エイドは午前8時オープンのためまだ開いていなかった。そこから車道左脇に入り、正面から来るランナー達と行き違いながら往還道に向かう。そこで140kmに参加しているHさんと遭遇。「予定より1時間遅れてます」というが、なんだかとっても楽しそう。「お互いにゴールまで頑張りましょう」とエールを交わして別れる。しばらく続く舗装路の上り坂では、足指はダメでも足の筋肉はまだ生きているので少しだけ根性見せて歩かずに上り切り、何人かのランナーを追い越す。いよいよ往還道=山道に入る前に写真撮影、そのあたりに転がっている手頃な枝を拾って杖とする。結局ここで拾った杖は瑠璃光寺まで持ち帰ることとなった。山道の上りは足指への刺激が少ないため(そのときの自分としては)快調に上れる。しかし、ピークまで上ってからの下りはもう拷問に近い…。一歩一歩、杖をついて足指に刺激を与えないようゆっくり慎重に下る、しか出来ない。後ろにランナーの気配を感じれば、脇によけて先に行ってもらう。向かい側から走ってくるBやCのランナーさんがこちらのAゼッケン(250km)を見て「お帰りなさ~い」と声をかけてくれるのが嬉しい。が、正直走れていないのでかなり体裁が悪い。颯爽と走れていればその掛け声もまた違ったものに感じられたのだろうけれど。

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超スローペースでなんとか下り切って舗装路に出る。下界はすでにかなり気温が上がっている。次の明木エイドにとにかく早くたどり着きたい。シリアスに走っているCの上位ランナーには尋ねづらいが、この時間にこの地点をのんびり走っているBのランナーならいいだろう、と思って「明木エイドはまだですか?」と尋ねると「もうすぐそこです。たぶん1kmもないですよ」との返事があり、その言葉を信じて歩き走りするもののなかなか到着しない。日陰がまったくなく、すでに直射日光がきつい。行けども行けどもエイドらしきものが前方に見えないので気持ちが切れかける。あまつさえ寝不足のせいかイライラさえしてくる。性懲りもなく前方から来るランナーにまた話しかけてみると「もう少し行くと橋があるので、それを渡るとすぐにエイドがありますよ」とのこと。こういう具体的な説明が有難い。かなり進んでからやっと小さな橋を渡り、右折すると遠くに(自分にはかなり遠くに見えた)エイドらしきものが見えた。あとで地図を見てみると舗装路に下り立ってからエイドまで2kmはあった。

明木エイド:227km地点、到着時間が午前9時。トイレに寄ってからバッタリとパイプ椅子に座り込む。もうワタシは動けませんよ…と、ひよっていたらMさんに遭遇。Cゼッケンの70kmに弟さんと一緒に出走とのこと。エイドからコーラとお饅頭を持ってきてくれたので頂く。それで少し元気が出てエイドを出発。すぐに山道に入ってひたすら上り。今の自分には上りは非常に有難い。杖を使って一気に石畳を上っていく。確かに杖は上りも下りもサポートの役目を果たしてくれる優れモノ。よくトレイルでストックを使っているランナーがいるが、今回その理由が良く分かった。スピード走ならまだしも長距離では絶大な威力を発揮すると思う。
きついと言われていた一升谷も、あれもう着いちゃったの?という感じで、なんなく十合目をクリア。そこから車道に出て更に上り。すでにかなり気温が上がってランナーにとって厳しい状況になってきた。さすがに暑くなってアームウォーマーを外し、インナーのファイントラックを脱ぐ。歩き走りを繰り返してピークの釿ノ切峠に到達、そこから自分にとって拷問の下りがまた始まる。ただひたすら右足指に刺激を与えないようにゆっくりと下りていくだけ。変な歩き方をするので右膝への負担が半端ない。パタパタと駆け下りていくランナーがあまりにも羨ましくて、もはや同じ大会に参加しているとは思えない。

なんとか舗装路に下り立ち、ラストエイド佐々並:237kmに到着。時刻は午前11:40。地図で確認したところ、残り約14kmを6時間で走ればよい計算。よくぞここまで漕ぎ着けた、一安心して30分ほど長居をする。名物の豆腐を頂き、普段は使わないエアーサロンパスをおまじないとともに足の各所に噴きかけまくり、シューズを脱いで右足小指の状況を確認する。足指の皮がめくれて酷いことになっているのは分かっていたが、よく見ると足自体がむくんでかなり肥大している。これでは確かにシューズがきついわけだ。走るとすっぽ抜けるくらいまで最大限にシューズの紐を緩めても、履いてみるとまだシューズがきつい、う~ん、本当に痛い。いい歳した成人男子が言うのもなんだけど、心底痛いよ、おじさん泣いちゃうよ。後方10メートルくらいにあるトイレが遥か彼方に感じられるも、この先長くなるだろうから寄っておく。

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さて、最後の旅路に出発。ザックはしっかり背負っている。杖は右手に持っている。出来ればシューズを脱ぎ捨ててしまいたいが代案が無い。頭の中で再度計算する。あと残り6時間で14km、おおざっぱに区分けすると、まず板堂峠までの車道の上りが7km、そこから始まる往還道の下りが3.5km、下り終わってゴールまでの車道が同じく3.5km。まず板堂峠までの7kmを2時間でいきたい、最初の1時間で4km前進したい。ここで初めてGPSを作動させて移動距離を測る。走ればあっという間の4kmも、炎天下のきつい上り、おまけに足指が崩壊しているとまったく距離が稼げない。杖をつきながらヨタヨタと歩く。ちょっと歩いてはガードレールにつかまって右足シューズを脱いで足を開放、またちょっと歩いては足を開放。このままでは1時間で4kmも前に進めない。意を決して「痛みを無視」して超スローながらも走ってみるが100メートルも走れない、あー、情けない、惨めだ、本当に惨めだ。こんなにも気持ちの良い初夏の青空を仰いで泣き出したい気分になる。ウグイスさえ気分良さそうに鳴いているのになぜなんだ!何人もの後続ランナーが追い抜きざまに声をかけてくれる。「どうしたの?」「ここまで来ればもう大丈夫!」「無理しないで」と気を使ってくれる。皆さんだって満身創痍だろうに。

炎天下を無理して走ったせいか、めまいがして頭がクラクラしてきた。まずい兆候。そういえば明木エイドで饅頭を食べて以降、佐々並では豆腐しか食べていない。あまりの足指の痛みに食欲を感じる余裕もなかったが、どうやらハンガーノックになりかけているらしい。慌ててCP1:豊田湖畔公園から後生大事にザックに入れていたアンパンにかぶりつく。ちょっと木陰で休むとめまいは収まった。危なかった。GPSを見るとなんとか1時間で目標の4kmを前進出来た。次の1時間であと3km前進、最終関門の夏木キャンプ場を越えて往還道入口の板堂峠までたどり着きたい、たどり着かないとまずい。とにかく歩き続けよう、前に進もう、それだけを考えながら足を動かすも右足指の激痛がそれを妨げる。あまりの痛みに立ち止まり、地図を取り出して眺め、前方を見上げ、いったいあとどれくらい歩けば夏木キャンプ場にたどり着くのか、あのカーブの先か、と何十回考えたかわからなくなる頃にとうとう夏木キャンプ場に到着。2つある私設エイドのうち1つでコーラを頂く。ギターを弾きながらランナーの応援してくれている人がいた。そこから更に500メートルほど進んでやっと板堂峠に到着。誘導員スタッフに言われるがままに山道に入って行く。時間はちょうど午後2時。残り7kmであと4時間。
(まだ終わりませんでした。あともう1回だけ続く)